米国経済、金融の日本化議論

米国の「日本化」議論

昨年8月のジヤクソンーホールでは、バーナンキFRB議長の講演のほかに、注目を集めたものがある。それは、ラインハート夫妻の『Afterthe fall』という論文である。大恐慌から日本や北欧の事例までさまざまな金融危機の事例を集め、危機前のレバレッジが高ければ高いほど、危機後のデーレバレッジ(レバレッジ解消)のプロセスは深ぐ、長ぐ続くこと、その結果、危機後10年程度は低成長と高失業が続く、という結論を導いている。

 

バブル崩壊後の苦しみを経験した日本からみれば、至極当然の結論であるが、米国の多くのエコノミストに衝撃を与えたらしい。実際、最近の米国の景気回復の弱さを言い当てているように思われる。

 

最近は、金融危機の後遺症による停滞に加え、債務上限問題をめぐる与野党協議の難航等に日本との類似性を見て、「日本化」(ジャパナイゼーション)を懸念する声もある。7月末の英『エコノミスト』誌には、オバマ大統領がドイツのメルケル首相とともに着物を着て、昔の銭湯の絵のような富士山を背景に苦虫をかみつぶしている姿が表紙を飾った。

 

しかし米国経済には、日本と決定的に異なる点が3点あることも最後に述べたい。

 

第1にバブル後の日本では、企業も「過剰債務、過剰設備、過剰雇用」に苦しみ、バランスシート調整を余儀なくされた。米国の企業のバランスシートは、比較的健全であり、過剰債務問題はない。

 

第2に、米国では人口が年1%ずつ増加している。合計特殊出生率も2を超えている。これは、既に人口減少期に入っている日本とはまったく違う点である。米国の住宅市場の調整は今後数年にわたって続くと考えられるが、人口が増加しているから、いつの日か住宅在庫が適正水準まで減少し、調整局面も終了ずると考えられる。日本のように、高齢化と人口減少で空き家率が一貫して上昇し、13.1%とほぼ7軒に1軒が空き家となっている我が国とは状況が異なると考えるべきである。

 

第3に、世界中の優れた人材を引きつけ続けていることである。最先端の科学技術から学問、文化、芸術まで、世界の才能ある人々が依然として米国に集まり、切磋琢磨して新しいものを生み出している。最近、一流大学への留学生は、中国人やインド人が席巻しているが、彼らが米国に定着し、競争のなかから新しい技術を生み出していけば、米国経済の力となる。

 

実際、米国の大学で理工系の博士号を取得した中国人の5年後における米国滞在率は約9割、インド人は約8割という調査がある。日本で博士号を取得した留学生の就職率は3割に過ぎず、歴然とした差を感じざるをえない。文化、芸術の分野もそうである。一度はニューヨークで演奏したい、踊りたい、歌いたいという若者が世界中にいる。こうした人材の集積が生みだす活気がある限り、米国の潜在的な成長力を侮ることはできないであろう。

 

米国の景気回復は、今後もしばらくは金融危機後の余波により緩やかな基調が続くであろうが、同時に、安易に「日本化」と片付けられない強靭さを米国経済が備えていることも忘れてはならない。

最新の為替相場(FX)欧州時間は、米国株式先物の推移などを考慮してドル円やクロス円通貨がアジア時間の急騰からの下落に歯止めをかける格好となったものの、その後スイスフランが急騰すると、ユーロやポンドが下落する展開を強めたためにその他の主要通貨も頭の重たい展開となり、これらのクロス円通貨も値を下げる動きとなった。一方ドル円は、主要通貨に対するドル買戻しの流れの影響で、アジア時間に示現した高値に迫る水準まで値を回復する動きを演じる事となった。