QE2の効果と副作用

QE2の効果と副作用

このように、GDPの7割を占める消費の足取りは重いが、それでも09年6月を谷に米国の景気が一応回復してきたのは、09年2月、オバマ政権発足直後に決めた財政刺激策にやかながら回復してきたことがある。

 

さらに、昨年秋以降は、量的緩和第2弾(QE2)による資産効果を通じた消費押し上げ効果もあった。QE2が開始されたのは10年1111月だが、同年8月のジヤクソンーホールの講演で、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長がQE2を示唆しただけで、株式市場は敏感に反応、9月にはニューヨークで会ったエコノミストの誰もが、QE2の規模や手法について熱く語るほど、QE2に対する期待がウォール街を覆い、株価を押し上げた。

 

QE2によるポートフォリオーリバランシング効果とも言えるが、マインド面の効果も大きかったと思われる。こうした株価上昇が消費も押し上げた。米国では、家計の株式保有は多いが、その保有は高所得層、資産家層に偏っている。

 

また、全体の2割を占める高所得層が消費全体の約4割を行っている。高所得層の消費動向が消費全体を大きく左右する国なのである。昨年秋の株価上昇は、資産効果を通じて高所得層の消費を喚起し、クリスマス商戦では、高級品や高級百貨店の売り上げが高い伸びを示した。しかしながら、今年6月にはQE2が終了し、その前月から株価は変調を示し始めた。

QE2による消費押し上げ効果も急速にしぼんでしまった。

一方、QE2の副作用に加えて、昨年夏からの干ばつや、今年1月からの中東・北アフリカの政変により、食品価格やガソリン価格の上昇が今年の春先から顕著になってきた。ガソリン価格は、09年時点では1ガロン=1〜2ドル程度であったが、今春には4バ弱まで急上昇した。大都市の郊外や地方では自動車は生活必需品であり、ガソリン価格の上昇は低所得層には大きな打撃である。

 

内閣府の分析(『世界経済の潮流2011−I』)によれば、低所得層ほどガソリン消費が消費に占める割合は高く、ガソリン価格が安かった09年時点の調査でも、最も所得が低い階層(全体の20%)では、所得の9・3%をガソリン購入に充てていた。食品価格の上昇も深刻である。

 

最近は、パンやシリアルの上昇に加え、肉類の価格も家畜のエサになる穀物代が転嫁されて上昇している。これでは、低所得者層の家計は相当厳しい。失業率が高止まりしていることもあって、フードスタンプ(低所得者向けの食料購入補助)の受給者数は約4500万人、全人口の11.2%と過去最高水準まで上昇している。

 

株価下落で高所得者層の消費も伸びず、ガソリンや食品の価格上昇で低所得者層も耐久財購入等に回すお金の余裕がなくなっている。それが最近の消費の停滞に表れていると考えられる。特に4月から6月まで、個人消費は実質ベースでみて毎月減少が続いており、それが前述のGDP統計にも表れることとなった。

 

消費の伸びを支えるはずの雇用の状況をみても、失業率は09年10月に10.1%と80年代初めのスタグフレーション期に匹敵する水準に達した 約2年近く9%前後で高止まりしている。雇用者報酬の伸びも低いものとなっており、最近は実質でみるとほぼゼロにまで低下している。

最新の為替相場(FX)欧州時間は、米国株式先物の推移などを考慮してドル円やクロス円通貨がアジア時間の急騰からの下落に歯止めをかける格好となったものの、その後スイスフランが急騰すると、ユーロやポンドが下落する展開を強めたためにその他の主要通貨も頭の重たい展開となり、これらのクロス円通貨も値を下げる動きとなった。一方ドル円は、主要通貨に対するドル買戻しの流れの影響で、アジア時間に示現した高値に迫る水準まで値を回復する動きを演じる事となった。